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【価値マーケティング】マーケット感覚を身につけよう/要約・感想【ちきりん】

マーケット感覚を身につけようについて

タイトル マーケット感覚を身につけよう
概要

「論理思考」と対になるもう1つの力、「マーケット感覚」を解説する初めて本です。

いたる所で市場化が進み、不確実性が高まるこれからの社会では、英語力や資格などの個別のスキルよりも、「何を学ぶべきか?」「自分は何を売りにすべきか?」という「本質的な価値」を見抜く、一段上のレベルの能力が必要になります。

その力を、本書では「マーケット感覚」と命名しています。

これは、別の言い方をすれば、「社会の動きがこれからどうなるのか」「今ヒットするのはどんなものか」
などがわかるアンテナやセンサーに当たるものであり、「生きる力」「稼ぐ力」と呼ばれているものの核とも言える能力です。

マーケット感覚を身につけると、世の中の見方がガラッと変わります。

著者 ちきりん
 

関西出身。バブル期に証券会社に就職。その後、米国での大学院留学、外資系企業勤務を経て2011年から文筆活動に専念。
2005年開設の社会派ブログ「Chikirinの日記」は、日本有数のアクセスと読者数を誇る。
11万部のベストセラー『自分のアタマで考えよう』を始め、著作も多数。
近著にブログの戦略的な運営方法をまとめた『「自分メディア」はこう作る! 』など。

amazon評価(記事執筆時点) ★★★★☆ (4.4/5)

マーケット感覚を身につけようの目次+要点

序章 もうひとつの能力

マーケット感覚。それはこれからの時代を生きる現代人にはとても大切で、仕事においては、その能力の有無によって成果が左右されることになると著者は書かれています。

では、マーケット感覚とは何か。それは”顧客が、市場で価値を取引する場面を、直感的に思い浮かべられる能力”と著者は定義されています。具体的に言うとこんな感じです。

ある飛行機会社Aのライバルはどの会社?

この問いに飛行機会社Jがライバルと答えるのは正解です。正解ですが、これはロジカルに考えた場合の正解であって、マーケット感覚でとらえるとこの正解が変わってきます。

飛行機を”目的地に高速で移動できる”という価値に重点を置いて考えると、高速バスや新幹線がライバルになってきます。こういった”価値”に重きを置いて考える感覚をマーケット感覚と言います。

ロジカルな視点、ロジカルな思考も必要です。しかし、それだけでは現実をとらえるにはまだ不十分で、現実をとらえて、これからの動きを予測するなら、価値に重きを置く”マーケット感覚”を磨くことが大切だよ。

そして、それを磨くにはこうすることをオススメしますよってことがこの本で書かれています。

1章 市場と価値とマーケット感覚

取引が発生する場所を”市場”と呼びますが、その”市場”で何が取引をされているのが”価値”です。

まず市場の定義ですが、著者は次の3つであるとしています。

  • 不特定多数の買い手と不特定多数の売り手がいる
  • お互いのニーズがマッチングされる
  • 価値の交換ができる

この3つを見たいしているのが市場です。例えば、株式市場なら株式銘柄という商品を不特定多数の買い手と売り手がマッチングされて交換できます。その交換によって株式が持つ値上がり期待と配当金獲得権利などの価値が移動します。(価値はこれだけに限らないですが…)

このような市場はあらゆるところで形成されていて、合コンも不特定多数の買い手と売り手があつまって、互いのニーズに合う相手とのマッチングを求め、それが実現可能な空間です。市場のある所に”価値”があります。

 

その市場を理解するためには次の7つの要素が不可欠だと著者は書いています。

  • 取引される価値
  • 買い手=需要者
  • 売り手=供給者
  • 取引条件

まずこの4つの要素で市場は構成されています。これはわかりやすいかと思います。加えて、市場をさらに理解するためには次の3つが重要になります。

  • 買い手と売り手が取引する動機
  • それぞれの要素に起こりうる変化
  • 市場の中で選ばれるための方法

この3点です。この3点への理解を深めるほど、市場への理解が高まり、その市場で今後起こりうることも予測可能になってきます。

この中で特に重要なのが「取引される価値」です。その市場ではどんな価値が取引されているのか、です。

本の中ではお米とスイカが例に出てきます。独占市場を作れればどちらも高値で自由自在に値付けできるというわけではない、その理由は取引される価値が違うからというものです。

片方は主食、片方はおやつです。主食で独占市場を作れれば価格を自由自在にコントロールできるかもしれないが、おやつはそこまでの主導権を握れない。この違いは、取引される価値の違いがあるためです。

ロジカルに考えれば「独占市場を作れれば価格は自由自在になる」が正解なのですが、価値に着目すると「取引される価値によっては、市場を独占しても価格の主導権を握れない」となります。

この取引される価値は何かを考えて、あたりをつける能力がマーケット感覚です。

2章 市場化する社会

今、世の中は急速に市場化していると言えます。だからこそ、その市場の中で自分自身をどの位置に置くのかというマーケット感覚が重要になってきています。

なぜなら、その感覚を磨かずに市場化の波に飲まれてしまうと、気付けば自分自身が不利な状況に陥っていることがある…なんてことは珍しくないためです。これが著書が第二章で特に訴えたいことです。

市場化する大きな要因となっているのはデジタル化とネットの存在によって、急速にいろいろな垣根が取り払われて市場を形成しやすくなっているためです。

例えば、結婚。一昔前は許嫁やお見合いというマッチングが一般的でしたが、その後、恋愛結婚という価値観が海外から入ってきて自由恋愛が発展しました。これも一つの市場化ではありますが、とはいえまだ行動半径の中での出会いの中からのマッチングです。市場の規模はそれほど大きくありません。

しかし、そこにネットという存在が入ってきたことによって地域という壁を飛び越えた出会いが可能となり、市場が急速に大きくなりました。その中で恋愛を勝ち抜くには、市場の中で自身が有利になるポジションを見つけるしかありません。

以前なら男女比で男性が少ない環境に居るというだけで恋愛強者側に行けたかもしれませんが、今は何万人、何十万人というライバルの中で何かで秀でていないと有利なほうに立つことができなくなっています。

この市場化があらゆる場面、あらゆる状況で生まれやすくなっています。

そして、その市場化は市場のルールを変える力も持っています。本の中で例としてミシュランという評価軸が市場に入ってきたことでの影響が書かれています。

日本でお店を出している方が”ミシュランに選ばれたい”と思ったとします。そうなると、まずやるべきはミシュランの調査員が高く評価するお店とはどんなお店か?という調査、そしてそれに基づく変化です。日本人がどう思うのかではなく、ミシュランの調査員がどう思うのか、ひいてはミシュランを目安にレストランを選ぶ方は何を目安としているのかがその市場のルールとなってくるわけです。

市場が変化することで、ルールが変化していきます。このルールの変化に気付けるのか否かもマーケット感覚でもありますし、その感覚を持っているのか持っていないのかが売上に影響を与えることは容易に想像できるかと思います。

3章 マーケット感覚で変わる世の中の見え方

この章でも、マーケットの変化を察知することへの大切さが書かれています。

マーケット感覚を持たないままで居ると、その選択そのものが間違えているかもしれないよ。でも、その間違いに気づくのは間違った!と確信をした時なので、結構後戻りができない状態になっている。

また、マーケット感覚を持って捉えると、どこが競合しているのか、何を競争しているのかがわかってくるので、より俯瞰で物事をとらえやすくなるというものです。

例えば、婚活市場である男性が連敗をしているという特集があったが、その男性は特に条件面では不利ではなく、むしろなぜ連敗しているのかがわからないというもの。で、その男性の行動を見ていくと、男性が求める20代女性という条件がその婚活市場では非常に厳しい条件ではないか?ということが考えられる。

なぜなら、まず相対的に見てその市場に20代女性は数が少ない年齢層。しかし、男性側が20代女性を好む傾向があるので20代女性に人気がどうしても集中する。そうなると、競争が苛烈になるので、戦いそのものがハイレベルで厳しくなるというもの。(逆に言えば、2婚活サイトや婚活サービスに登録している20代女性は賢明だということかもしれない)

だから、その男性はターゲットとすべき相手を変えるなり、婚活サービス以外の選択肢を検討するなりすることがマーケット感覚的に自分に有利なポジションを作ることになるが、マーケット感覚が希薄だと「自分が悪いのか」「もっとこうすればよかったのか?」と内側に向きがちになる。

また、あらゆる場面を市場として捉えると、そこで起きていることがわかる。その例として寄付市場が挙げられていた。その市場で多く寄付を得るにはどうすればいいのか?という部分で戦略や戦術が多く見受けられて、市場を分析するには面白いというもの。

例えば、カンボジアの子供を救ってくださいというアピールをしている寄付広告が多いが、実際にカンボジアは世界最貧国ってわけでもない。また、飢えているのは子供だけではない。大人も飢えている。でもその広告を選んでいるということには、それが市場で選ばれやすいからという根拠があるためかもしれない。

そうだとするなら、その市場のルールや傾向が見えてくる。

そういう風に、そこに市場があるのだという視点で見ることで、その市場の参加者の中では何が起きていて、どうすれば選ばれるのか?ということを理解しやすくなってくる。

その感性を磨くことは、英語やITのスキルを身に着けるよりもはるかに豊かさに直結しているのではないか?ということが書かれている。

4章 すべては「価値」から始まる

市場を形成する核となるのは「価値」。その「価値」を見極める感性をマーケット感覚と著者は呼んでいて、この感覚は、稼ぐ、売るといった行為のあらゆる知識やスキルよりも大切なものであるとしています。

では、その「価値」とは何かについて書かれているのがこの章。

価値とは何かとなると、それは便益であるとか、ベネフィットであるという説明が正解になってきますが、具体的に見ると何かと言うと、”お金を払ってでも手に入れたい何か”ということになってくると僕は考えています。

本の中で例として挙げられている中でなるほどと思えたのがジャパネットたかたは何を打っているのかという点。家電、生活雑貨…などなど、いろいろなものを売っているが、それらすべて近くの量販店でも買えるし、なんなら価格的に見ても近所で買うほうが安いものもある。

でも、なぜジャパネットたかたで買うのかというと、それを通して手に入れることができる便益、つまり「価値」を手に入れたいから。「これがあると良いよと孫が薦めてくれたんです」という利用者の声を紹介しているが、あれは孫とのコミュニケーションが生まれるんですよということを伝えている。

それを欲している人には刺さる。その価値をこの商品を買えば手に入れることができると思ったら、手に入れずにはいられない。まずは「こんな価値が手に入りますよ」それが、この価格、この仕様で手に入ります。どうですか?でメッセージを発して刺さるから売り上げを大きく伸ばしていると言えるということなのです。

ジャパネットたかたはそういった商品の持つ”価値”に焦点をあて、その市場を生み出しているマーケット感覚を持った企業だということですね。

そういった”価値は何か”を常に注意を払って、価値を見出す。それができる人がマーケット感覚を持っているということだよということが説明されています。

5章 マーケット感覚を鍛える5つの方法

この章では実際にどうすればマーケット感覚を身に着けられるのかを5段階のステップバイステップで解説している。この本の一番の肝の章と言っても良いと思う。

その大きな流れは次の5つ。

  1. 自分で価格をつけてみる
  2. インセンティブシステムを理解する
  3. 市場に評価される方法を知る
  4. フィードバックを得る
  5. 市場に身を置く

この5段階を繰り返すことによってマーケット感覚は身に付きますよというもの。いずれもほとんどの日本人は実践していないと思うし、だからこそマーケット感覚を身に着けるとその他多数から1つも2つも抜け出すことができる。

まず価格をつける。ありとあらゆることに価格をつけてみる。例えば、席を譲ってもらうという行為はどの程度の価格をつけることができるのか。人気ラーメン店で行列に並ばずに優先的に入れるとしたら、いくら出せる?

100円と言う人もいるし、中にはラーメン一杯分と言う人もいれば、5,000円でもいいよって人も居るかもしれない。そこに正解はない。ただ、価値に値付けをするということがマーケット感覚を養うための第一歩目になる。

もし、5,000円でもいいよって人がいるぐらいに価値があるのなら、そしてそれが100人に1人であっても、その市場は十分に価値があると言える。優先サービスを一人100円でとなると、逆に多くの人が利用して優先されないという不満が起きるかもしれない。

また、5,000円を稼ぐためには一人100円だと50人を捌かなければいけないが、一人5,000円だと一人で成立する。採算性も効率もいいし、その価格を出した一人を優先するだけなら、行列に並んでいる人も順番を抜かされても納得できるかもしれない。

では、このようなシステムがうまくいくのか?というのは実際にやってみるまでわからないので、やってみて反応を得てみる。さっぱりダメならそこに市場はなかったってことがわかるし、反応があるなら市場はあるし、利用者から不満があれば、そこで改善点が見つかるかもしれない。

こういった感じで、まず価格を妄想の中でいいので付けてみる。その市場の参加者、特に消費者はどういうインセンティブシステムで動く人たちなのかを理解し、そのインセンティブシステムに基づいて評価され、選ばれるような形にするにはどうすればいいのか?を考える。

実際にそれを出してみて検証する。そういうことができる環境に自分を置く。

これがマーケット感覚を養ううえでの大きな流れになります。具体的な部分はぜひ書籍を読んで確認してみてください。

終章 変わらなければ替えられる

最後は、変化することの大切さが書かれています。

市場化の波は本人がどう思うのかに関係なく、突然と言っていいタイミングで、そして後から見ると必然的に押し寄せてきます。その変化に対応するのか、反発するのかは自由です。ただ、変化を拒むと、選ばれない側に行く可能性が非常に高まります。

つまり、変化をしないなら、市場の力によって代わりに替えられます。

何かの専門家という地位を確立したところで、それを市場が求めなくなると、その専門家という地位は意味も価値も薄まります。でも、本人は「私は○○の専門家だ!」とかたくなに変化を拒むと、誰からも必要とされなくなるリスクだけが高まっていきます。

市場は変化を求めますので、変化を拒むことは市場からの退場となり、空いた席を誰かが座ることになります。

だから、市場の変化を感じる感性、マーケット感覚を持っておくことが人生の荒波を乗りこなしていくうえでもとても重要になってきますので、ぜひマーケット感覚を磨きましょう。

そのようなことが終章で書かれて、終わりとなっています。

マーケット感覚を身につけようの感想

とても良い本だった記憶があるので、久々に読んでみたくなり、そして、せっかくだから記事にして残しておきたくなり取り上げてみました。

youtubeブームなのでちきりんさんを若い世代の人は知らないかもしれませんが、ブログやツイッターが普及していく過程でその只中に居た人なら、ご存じの方も多いと思います。とても知的で、言語化能力も高いので、書かれた書籍は読みやすく、そのせいで読み終わるとまるで自分が賢くなったかのような錯覚すら覚えてしまいます。

そんなちきりんさんの本はいくつかありますが、はじめて読んで衝撃だったこの「マーケット感覚を身につけよう」をまずは取り上げてみました。

 

書かれているのはマーケット感覚というもので、後にも先にもその切り口で書かれているのはちきりんさんだけだと思います。いわゆるマーケティングの本だと言えばそうなのかもしれませんが、マーケティングという大きな括りで考えると少し違うと言いますか。

感覚的なこと、感性的な事なので、数字の変化どうこうじゃないんですよね。結果として数字の変化として現れることにはなりますが、もっと大きな、ルールがどう変わるのかについてが書かれている本だと僕は解釈しています。

例えば、今ブログを運営したところで以前ほどのメリットはありません。これはブログ界隈の市場化が進み、変化をしていく中で、参加者の量と質の変化、加えて、インセンティブシステム、選ばれる理由などが変化していったためです。

それにいち早く気付いた人は去っていますし、残ることに市場的価値を見出した人も居ると思いますし、僕のように揺り戻しが起きると思って始めている人も居ると思っています。

何が正解かはわかりませんので、運営しながら答えやヒントを得るしかありませんが、こういう環境の変化を市場によって起きているのだと捉える視点を教えてくれているのが「マーケット感覚を身につけよう」で、とても良い本だと思います。

全ての社会人必読の一冊だと思います。

特に、今いる場所で成果を上げたい人は必読だと思いますよ。