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【アクティブリコール】科学的根拠に基づく最高の勉強法/要約・感想【安川康介】

科学的根拠に基づく最高の勉強法について

タイトル 科学的根拠に基づく最高の勉強法
概要

私たちが今まで慣れ親しんだ、繰り返し読む(再読)、ノートに書き写す・まとめる、ハイライトや下線を引く、といった学習法は、実は身につきにくいやり方だった。

覚えたことを思い出す、人に教えられる=アウトプットこそが成長につながる、

研究によって検証された効率的な勉強法です。

著者 安川康介
 

2007年慶應義塾大学医学部卒業。日本赤十字社医療センター初期研修修了後、2009年に渡米。University of Minnesota内科レジデンシー、Baylor College of Medicine感染症フェローシップ修了。米国内科専門医・感染症専門医。南フロリダ大学内科助教。

amazon評価(記事執筆時点) ★★★★☆ (4.6/5)

科学的根拠に基づく最高の勉強法の動画

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科学的根拠に基づく最高の勉強法の目次+要点

第1章 科学的に効果の高くない勉強法/繰り返し読む、ノートに書き写す・まとめる、ハイライト・下線を引く

今までの勉強法は思っているほど効果はないよ。もっと効率よく学びたいならその勉強法を改めたほうがいいよ。そういうことが第一章では書かれています。

僕たちが用いている主な勉強法には次のようなものがあるかと思います。

  • 繰り返し読む
  • ノートに書き写す
  • 線を引く、マーカーを引く

これらが全く効果がないということはありませんが、それほど効果がないということも最近の研究からわかっています。

例えば、1回しか読まないよりも2回読むほうが暗記量は増えますが、読めば読むほど覚える量が増えるわけではないってことが研究からわかっています。

では、なぜ僕たちが反復して読む勉強法を用いるのかというと、繰り返して読むことで「あ、これ読んだことがある」「そうそうそうなんだよね」と内容を読み解ける感覚が出てきます。この感覚を味わうと、”勉強をした”という満足感と繋がります。これを”流暢性の錯覚”と言います。

繰り返し読むことで満足感のようなものは味わえますが、それは記憶量が増えたことを意味していませんので、その感覚をあてにしないほうがいいよということなのです。

この流暢性の錯覚はノートに書き写すであったり、線を引く、マーカーを引くということでも同様のことが言えます。いずれも以前よりもそれをスムーズに読み解けたり、馴染みを感じたりしやすくなるので、勉強をした”気分”を得ることはできます。

では実際にそれによって学習効果を得ることができているのかというと、それを裏付ける実験結果はありません。つまり、意味がないのでは?というのが今の結論です。

ただ、ノートを取ることがダメということではありません。その行為そのものに達成感を味わえるようやものではダメなのであって、記憶して定着させるのに役立つノートの取り方ならもちろん効果あり!です。

このような従来の勉強法は科学的に見て効果面で疑問符が残りますよってことが第一章に書かれています。

第2章 科学的に効果が高い勉強法/アクティブリコール、分散学習・間隔反復、連続的再学習、インターリービング、自己説明とせいち的質問

研究により、効果の高い勉強法は何かが現在は判明しつつあります。この書籍が発刊された時点では次の2つを用いる勉強法が効果的であることがわかっています。

  • アクティブリコール
  • 分散学習・感覚反復

この2つを同時に用いる学習法が連続的再学習です。

 

アクティブリコールは、覚えたいことを積極的に思い出すという暗記法を指します。これが今日現在の勉強法として最も効果的だとされています。

その背景には、勉強に対する価値観で次のような根本的な違いがあります。

  • ×:どれだけのインプットをこなしたのか
  • 〇:どれだけのアウトプットをこなしたのか

たくさんたくさん本を読んだ、何度も繰り返し読んだというのが今までの勉強法です。インプットの量を増やせばアウトプットもよくなる、何度も教科書も読めばテストの点数もよくなる、そういう考え方です。

そうじゃなくて、読んだ本の内容を何回アウトプットしたのか、です。厳密に言えば、高精度でアウトプットすることができるのか?高精度でアウトプットできるように、何度もアウトプットしたか?を軸にした勉強法が科学的に効果的であるとされています。

何度も何度も積極的に思い出す=アクティブリコールということなのです。

その手法は非常にシンプルです。学んだ内容を実際に書き出してみる、言葉にしてみる、それだけです。著者が実践していたのは、白紙にノーヒントで学んだ内容を書き出すという作業です。ノーヒントというのがカギです。なんのヒントもなく白紙に学んだ内容を書き出す。

覚えているつもりが、なかなか思い出せない。だから書けない。それでも頑張って思い出そうと脳に負荷をかける。これが暗記作業ではとても大切なんです。覚えるとはつまり思い出せるなのですから、思い出せてこそ”覚えた”と言えるはずです。思い出せないのは覚えてないということです。

そして、思い出せなかった、間違えていたという経験を経て、学んだところを読み返して正解を知る。そして、記憶に意識的にそれを定着させようとするプロセスこそが学びになります。

これが著者が軸にしている勉強法の1つです。

加えて、どの程度の頻度、どの程度の期間反復して勉強するのかということも、勉強を定着させるうえでは重要になってきます。つまり分散学習・感覚反復です。

1日にたっぷり時間をとって勉強をするよりも、複数日に分けて勉強をするほうが効果的という考え方です。

例えば、1日2時間で1つのことを学ぶよりも、1日1時間×2日のほうが学んだ内容はより定着します。では、その2日目の勉強はいつがいいのか?

これにはまだ結論は出ていないそうです。一定期間を開けるほうが良いのか、連日繰り返すほうが良いのかがわかっていませんが、著者は実体験から期間はさりとてとにかく繰り返すことこそが大切だとしています。

重要なのは、日をまたいだり、日をあけたりして繰り返すことでより記憶に定着するので、期間よりも反復が大切だという考え方です。

そして、アクティブリコールと分散学習・感覚反復をミックスさせた勉強法を”連続的再学習”と呼び、この手法を軸にした勉強法を用いることで、定期試験はもちろん、入試や資格試験などの勉強を効率よく効果的にやれますよってことが書かれています。

第3章 覚えにくいものを覚える古代からの記憶術

この章では、昔から使われているし、やはり効果があるとされている記憶法3つを紹介しています。

  • ストーリー法
  • イメージ変換法
  • 場所法

この3つです。試験勉強などで活用した方もいるかもしれないメジャーな記憶術で、これらは記憶に期待が持てるそうです。なんでも、文字が発明されたぐらいの古来にイメージ変換法とも言えるような記憶術い関する記述も発見されているそうです。

そこから変わらず現代でも記憶術として愛用されていますので、イメージ変換法は非常に効果的であると言えます。

いずれも方法は簡単です。ポイントは”覚えたい事柄とイメージを結びつける”ということです。

本来は何の因果関係ものをストーリーとして構築してみる。単なる数字を語呂合わせのようにして言葉に変換して数字からイメージを連想させる、家の間取り図のようなイメージを描き、部屋や廊下、階段に誰が居るのかを思い描いて覚えるなどなど…。

無機質な文言や数字にイメージというビジョンをくっつけることで、有機質に変えて覚えていくというやり方は、何かを記憶するうえでは非常に有用であるそうです。

第4章 勉強にまつわる心・体・環境の整え方

勉強をする自分自身。自分自身の状態をベストに保つことも一種の勉強法と言えるかもしれませんし、スキル以前の重要な部分と言えるかもしれません。

そんな勉強にまつわる心、体、環境の整え方がまとめられているのが第四章です。平たく言えば、心身ともに健康的な生活は勉強においてプラスになることが多いというものです。

例えば、勉強へのモチベーション。心が折れそうになったり、だれてきたりすることは誰にでもありますが、そこで続けることができるのかどうかが勉強の成果を左右することは良くあります。では、どうすればモチベーションを見つけることができるのか。

1つの答えは、自身の目標との関連性を勉強の中に見出すということです。著者は医師ですので、今やっている勉強は自身の夢のため、誰かの命を救うことに繋がっていると思うことで意欲を保ち続けたそうです。

このような心を保ち続けるための手法として、”小さな目標を建てて、それを達成し続ける”というものもあります。これは自己効力感を高めるためのアプローチでもあります。「自分はできる」と信じることができるのかどうかが自己効力感ではありますが、その自己効力感をたかめるには”小さな目標を建てて、それを達成し続ける”というアプローチが効果的であり、学習効果も高いということがわかっています。

このような心や体や環境を整えることについて触れられています。他にも…

睡眠は記憶にとっても大切。朝と夜、勉強した内容が定着しているのは夜、睡眠が記憶への定着を促していると思われる。だから睡眠を削るのは勉強においては大きなマイナスである。

ノートは3分割で使うほうが良い。1つは質問を書き、1つは学習内容を書き、1つにまとめを書く。その3分割を意識してノートを取ることで、アクティブリコール的な復習も簡単になる。などなど。

あと、誰かに教えるつもりで学んだことをノートにまとめていくというファインマンテクニックについても触れられています。科学的はまだ効果が検証されていませんが、ビル・ゲイツがこれが最も効果的な勉強法だったと言っており、内容もおそらく効果があると思われるテクニックを用いていますので、手法として取り入れてみてもよいかもしれません。

このような、勉強の心、体、環境についてまとめられています。

科学的根拠に基づく最高の勉強法の感想

もともとはYOUTUBEで偶然動画を発見し、そこで知識をある程度は得ていたものなので、内容そのものに驚きはありませんでした。

難関試験を突破した医師が実際に用いた科学的根拠のある勉強法ということで、ぜひ取り入れたいと思って動画を何度か繰り返し視聴しましたので、それも相まって内容に関しては驚きはそれほどなかったのかもしれません。

ただ、やはりこの本で書かれている勉強法は1つの革命に近い提案だとも思っています。

「暗記する=読みまくる・書きまくる」から「暗記する=何度も思い出す」という常識の転換が起きてしまいそうな内容だからです。

実は、僕自身この本の内容をさっそく取り入れています。例えばこの記事、章単位で要約を書いていますが、これは一度本を読み、読み終えた後に本の内容を思い出しながら誰かに話すつもりで何も見ずに書いています。本を見て書いているわけではありません。

厳密には全く見ないわけでもありません。一度章単位で要約を書き、内容に過不足がないかをもう一度本を読み返して確認します。もちろん過不足があればそこで修正しますが、基本的には何も見ずに思い出しながら書いています。

  • インプット(読書)
  • アウトプット(ブログ記事)
  • フィードバック(記事と本の内容のつき合わせ)

というアクティブリコール的な方法を用いています。

それがどんな効果を発揮しているのか、効果を発揮してくれるのかはまだ何もわかりませんが、例えば飲みの席でこの本について話してと言われたら、今の僕ならこの記事で書いている程度の事ならすらすらと話せるという自信はあります。

それを暗記ができているとするなら、きっと暗記に効果があるやり方なのだと思います。

まあ、アクティブリコールは本人は手ごたえを感じないけど、効果としてはちゃんとあると科学的にも立証されていますので、僕の感覚だけ暗記ができているできていないを論じるのは違うのかもしれませんが。

 

あと、余談になりますが、本の中で幾度か「覚えたいことは誰かに教えるつもりで暗唱する」ということが効果的だという記述があります。ファインマンテクニックという勉強法がまさにそれでもありますが、僕の知り合いの料理人がこんなことを言っていたのを思い出したんです。

「作り方を教えるつもりで料理をすると上達するぞ」

その知り合いが師匠からそう教えられたそうなのです。

料理人という世界、しかも10年前ぐらいに聞いた話です。この本も世に出ていない時代ですから特に科学的根拠があるわけでもなく、体験からくる知恵なのだと思いますが、それでも「教えながら実践するとうまくなる」ということが料理人の世界では学び方としてあったのだと思います。

だからどう?ってことではないのですが、ちょっと感動したのでどこかで誰かに伝えたくて最後に余談として書かせてもらいました。

 

今まさに何かの勉強中であるとか、資格を取りたいという目標があるとか、そういう方には手元に置いといて損はない、むしろ積極的に取り入れてほしい内容が詰まっている一冊です。

投資に対するリターンが非常に高くなることが期待できる良書ですので、ぜひお読みになってみてください。