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【人生を変える】ブスのマーケティング戦略/要約・感想【田村麻美】

ブスのマーケティング戦略について

タイトル ブスのマーケティング戦略
概要 見た目を武器にできないあなたへ──。「ありのままの自分を愛そう」は、ただの現実逃避──!? 幸せな人生と仕事での成功を本気で望むなら、自分を商品に見立てた「プロダクト解析」「市場」「競合」の精査が必要です。話題の税理士が、あなたを変える、「ブスの作業」33をわかりやすく解説します。マーケティング理論と行動提案を組み合わせた、画期的な戦略論。経年劣化に備える「美人の作業」も。爆笑必至の半生記と写真、図版が満載の一冊。
著者 田村麻美
 

税理士・田村麻美 東京都足立区でいちばん気さくな税理士。 立教大学経済学部卒業後、同大学院で博士課程前期課程修了。早稲田大学ビジネススクール(MBA)修了。 夫と娘の3人家族。 「ブス」という事実に向き合い、逃げず、あきらめず、腐らず、戦略的に努力をしてきた経験から、「がんばるブスたちが輝く日本をつくりたい」という骨太のライフワークを実践中。本書は、ブスが「幸せな結婚&ビジネスでの成功」をかなえるための戦略論を、具体的に記した処女作。

amazon評価(記事執筆時点) ★★★★☆ (4.3/5)

ブスのマーケティング戦略の目次+要点

第1章 自分を商品と考える

客観的に冷酷に自身を評価する。そこからすべてが始めるんだよってことを、著者の自己評価とともに解説されている。

タイトルで「ブスの」と銘打っているだけあって、自分自身がいかにしてブスであるということに気づいたのかというその過程を、思い出写真とともに面白おかしく語っている。他人に自分自身を評価しなさいと言っているのは、自分自身もこうして自信を評価してきたからどいう証左と言わんばかりの内容。

(ちなみに美人かどうかの線引きは”見た目を武器にできる人は美人”)

なぜそこまでの事をしなければいけないのかというと、自分自身が「商品」であるから。商品だから、それはどんな商品なのかを冷静に評価しなければ、必要とするお客様に正しく提供することができない。

では、自分を商品として評価するうえでどんな軸を用いるべきなのかというところで、次の5つを軸にすることを1つの例として挙げている。(著者が用いている評価軸でもある)

  • 容姿
  • 経済力
  • 学歴
  • 居心地
  • 相性

この5つの軸で自身を客観的に採点してみることで、商品としての自分を知ることができるというもの。

第2章 性欲をエネルギーに変えて商品力を高める

とにかくブスは勉強をするしかない!というのが著者の言いたいことであるし、それを体現して今をつかんでいる人でもある。だから勉強をしましょう!という、なんとか桜で見たような勉強ゴリ押しなのであるが、そこにはちゃんと理由も動機もあるというもの。

まず、その行動の原動力は欲望であるということ。良いパートナーと性的なことをしたい。それを思春期で思ってから、それを実現するにはどうすればいいのか?ということを考えに考えた。

自身がブスであると言う自覚を持ちつつ、しかし良いパートナーと関係を持つにはどうすればいい?

欲望に素直でありつつ、その欲望をかなえる為にはの部分で、”どこでそんな相手とであるのか?”ということを考える。良いパートナーとはどんな人か。それを考えに考えたところ、偏差値の高いイケメンであるという結論に達した。

それなら偏差値の高い人が多く集まる場所に行かなければいけない、つまり、自分の偏差値をあげるしかない、だから勉強だ!となったというもの。

この考え方は、マーケティングで言うセグメントの考え方。ターゲット像を描き、特性を分析して分類して、その分析結果によって最も効率よく効果的に出会えるポジションを見つけるというもの。

そして、その原動力は己の欲望である。著者で言うと性欲である。己の欲望に素直になることも同時にとても大切。

第3章 神童からただのブスへ

環境が変わると商品の評価も変わるし、顧客も変わる。その変化に合わせて自分を変えようぜってことが書かれている。

著者は地元では超頭のいい人として、つまりは「神童」として一目を置かれる人だった。でも、頭のいい人が集まる高校に入った途端、自分より頭のいい人しかいなくて、そこでは最下位に近い頭脳レベルになった。しかも、学年でトップクラスの頭脳を持ちつつ、容姿端麗という人まで居る環境。

そこで自分の武器としていた「頭脳」が価値のないものになったと悟った。商品価値である頭脳がまったく意味のないものになったことで、頭のいいブス→ただのブスとなった。そこに転機となったのが、髪型。個性的な髪型から、「おもしろい」という評価を得ることになった。

ここで、頭のいいブス→ただのブス→おもしろいブスという変化が起き、市場に合わせて商品の魅力も変わる、価値も変わるということを知り、市場に合わせて磨くべき個性を見極めてそれを磨くことの大切さを学んだのだそう。

その際には3C分析というマーケティングの概念が非常に役立ったそう。自分、お客、ライバルの3つの視点で客観評価するというもの。それで自分の立ち位置を見つけて磨くことが大切で、ここを間違えると努力が無駄になる。

その例として、朝早くから資格の勉強をして頑張っているけど職場ではライバルのほうがなぜか評価される…という憤りを感じる友達の事例が書かれていたが、これはまさに磨くべき部分を間違えているから起きる悲劇。顧客は上司、その上司から見て魅力的な商品は資格を持っているかどうかよりも”頼みやすさ”では?と。

そこでライバルに負けているから、いつまで経っても評価が変わらないのでは?と。

第4章 ブスが処女を捨てるとき

著者がずっと目標として掲げていた「20歳まで処女を捨てる」を達成できた。一言で言えばそんなことが書かれている章である。

著者自身も書いているが、マーケティングとは特に関係がない章でもあるけど、大切なことが書かれていないわけではない。大切な事とは何かというと、”目標に期限を決める”ということ。結果論としてそうなっただけと言えなくもないけど、もし期限を設定していなかったら達成していなかったかもしれないとも思う。

著者の場合はそれが処女喪失という人生で1回きりにビックイベントなわけだけど、それを達成するために計画を建て、戦略的に行動をしてきた。そして、それをが身を結んだ。これがもし期限がなかったら、どこかで先延ばしにするという判断があったのではないだろうか?

彼氏を作るにしても、この人じゃなくてもいいかという選択肢が芽生えていた可能性もあるわけだし。

期限があるからこそ前進するための選択肢を選べるし、期限があるからこそ計画を建てて行動を起こそうと思える。期限を決めることが実現につながる。そんなことが書かれている章です。

第5章 百回の合コンで学ぶ

著者はとにかくあまたの合コンを経験しているそうで、大学時代は気の合う3人で合コンをしまくっていたそう。もちろん、それは彼氏を作りたいということもあるけど、あふれる性欲に突き動かされている部分もあることもうかがえる。

その合コンをただやみくもに回数を重ねているだけと見るのは間違いで、やはり、ちゃんとした意図をもって合コンをしている。それが”自身の価値の市場調査とテスト”。

今の自分はどの市場に受けるのか、何が通用して何が通用しないのか、どういう流れを作ればうまくいくのかダメなのか。どんな会話が受けるのか。そういうことを実践を通して知り、学び、自身に反映させていくというサイクルをぐるぐる回す。

そうするとおのずと結果もついてくるというもの。

平たく言えば下手な鉄砲かずうちゃ当たる的な確率論に終始しそうな話ではあるんだけど、数を打つことの大切さと、どういう数の打ち方をするべきかに焦点を当ててマーケティング的な視点でそれを解説している。

結論として著者は「プライドの高い童貞をターゲットとしたニッチャー」というポジションを確立し、自身が勝てる戦い方を合コンの中から体得している。

第6章 ブスにとっての肩書きの重要性

著者の大学院時代と社会に出て間もないころが中心に書かれていて、ここではポジショニングについての重要性を語っている。

大学生時代の性に奔放だった経験が培ったものはなんだったのか?特にない。良いことも悪いことも特にないが、ただただ承認欲求がそれで満たされたことが大きかったという振り返りから、自分を支える肩書のようなものの大切さについてを語っている。

ブスという評価はそのままでいれば自己評価を上げることはとても困難。なかなか上がらない。その評価を消すことはできないが、それを上回ったり、それを武器にできるかのような肩書を付け加えることによって自己評価を高めることはできる。その1つが資格である。

著者は税理士、だから”ブスな税理士”という肩書を掲げることができる。税理士という希少価値の高い資格を持っていることで一目置かれるし、それによってブスというものが相殺とまではいかなくても、邪魔にはならない。むしろ個性として彩ることができる。

こういった肩書が自分の自己評価を高めて支える根拠になりうる。だから資格を取ろう!だし、本の初めにも書かれていた「勉強をしろ」という結論に繋がってくる。

加えて、そこに一芸でも加わればもうかなり希少価値の高い存在になれる。著者の場合、”ブス×税理士×聞き上手”という一芸が加えることで希少性が高い存在となりえた。

そんな自分を男女比で男性が多い場所、つまりは女性が少ない場所に置くことができれば、希少性も相まってその他大勢の中にうずもれることがない。

市場の中で自分の長所を磨き続けた過去をいかに生かすのかというフェイズについての話がまとめられている。

第7章 ブス自身も顧客であった

著者が仕事でつまづき、退職し、自分への評価が落ちていた時期のことが書かれている。その中で学んだ、自分もまた顧客であるということ、そして市場との相性ということが書かれている。

自分自身が犠牲になり、我慢を続ける場所や仕事に居続けること、それは本当に幸せなのだろうか?自分を顧客としてとらえた場合、その顧客の幸せをないがしろにしていないか。

そんな気づきがあり、その後の就職活動では方針がやや変わったそう。自分が仕事に求めること、一度働いた体験からわかったことを踏まえて仕事を探してみようとして、選んだ結果、とても満足のいく職場に出会うことができた。

合コンで市場分析やトライアンドエラーを繰り返した経験が生きたそうだけど、大切なのは、市場との相性ってのが必ずあるのだということ。前職でイマイチ手ごたえを感じなかったとしても、それは相性が悪かっただけということは十分にあり得る。市場が変わると正反対の評価を受けることがある。

自分という顧客を大切にし、そして、自分という顧客が喜ぶような市場を探してみる。その大切さが書かれている章です。

第8章 ブスの結婚

著者が運命の人と出会い、結婚という1つのゴールに到達した話がこの章では書かれている。めでたい章である。そして、前半とは打って変わったような価値観の変化も感じられる章でもある。

著者は自分自身の商品価値、そして、相手に求める価値などを客観的物差しで考えていたが、その変化が起きている。自分自身の感覚を大切にするという、自分という顧客を喜ばせる意識というものを軸に置いている。

学歴がどう、年収がどう、そういうことではなく、居心地が良い相手なのかという自分という顧客が喜ぶ物差しで相手を選ぶ。そのためには…ということが4Pというマーケティング概念を用いて説明をされている。

簡単に言えば、自分という商品(プロダクツ)をどういうプレイス(場所)でどういうプロモーション(販売促進)すればいいのかといかという観点で書かれている。

意外とそこを理解していないことで恋愛市場で苦戦をしている人もいるはずで、自分がその場所で自然に輝くためにはどうすればいいのかを考えてみようということが嫌味なく書かれている。

結婚式のファーストバイトの写真かな?ケーキを大きな口で食べようとしている写真がとても良い。

第9章 ブスの起業

結婚し、妊娠。そして出産間近での起業。でもその起業も結構スムーズにいき…ということが書かれているのがこの章です。マーケティング的な観点で言えば、起業して軌道に乗せるという過程はマーケティングそのものダイレクトなものと言えるかもしれません。

実際、何も考えずに起業したのではなく、ブログとホームページを駆使し、地域を絞り、自身の面白さを前面に出し、なおかつ女性税理士というニッチなポジションをもアピールと、マーケティング要素をふんだんに盛り込んだ戦略を用いておられます。

ここまで読んでいると、もうこういう発想で物事を考えることが自然とできる人なんだな…という感心も芽生えてくると言うか、驚きよりも成功が想定内に近いものに感じられるようになっています。

第10章 ブスの成功すごろくと美人の経年劣化

最終章は今までの総まとめと、美人に向けてのアドバイスとして書かれています。

ブスが美人にアドバイスとなると、成功したから言える上から目線の小言感が出るようで、マーケティング的な視点を用いた客観的なアドバイスがなされている章です。

例えば、見た目は経年劣化するので、見た目頼りの人生は行き詰る。だからほかの要素を鍛えましょう。逆にい言えば、他の要素を鍛えた美人にはブスは一生勝てないのも事実です。と言ったことが書かれています。

ブスのマーケティング戦略の感想

僕がこの本を読み始めて数ページで思ったのが「おもろ!」です。

だって、のっけから自分自身をブスいじり、おまけに性欲が理由で勉強頑張りましたってことを女性があけすけに書いているんだから、心つかまれますよね。あー、この人は良い人だ、嘘をつかない人だ…って。

そして、とにかく文章が面白い。面白いから飽きない。飽きないから苦痛じゃなく最後まで読める。マーケティング的に素晴らしいプロダクツです。

 

読み終わったからこそわかるのが、この本も著者の過去の経験から培ったマーケティング的な感性が土台になっていると思います。普通のマーケティング系の書籍として書かれていたなら、多分、その他多数にうずもれていたかもしれません。

”女性が書いた”という一点で興味をひきやすい部分はありますが、それでも女性が書いたというだけではまだ弱いです。

しかし、”ブス”というキーワードや、”性欲”という欲望を原動力にしていたという部分は、読み手をつかんで離しませんし、こんな本いままで読んだことないぞ…という強烈なインパクトがあります。きっとそこまで狙っているんだと思います。

 

だからといって、本の内容が手抜きなわけじゃない。ちゃんとマーケティング的な観点での解説もある。

笑いで客をつかみつつも、仕事は真面目にやる!という著者の仕事のスタンスが垣間見える良い本だな…と思いました。

マーケティングについて知りたいけど、堅苦しいのはな…って人はぜひ読んでみることをオススメします。