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【思考の方法】自分のアタマで考えよう/要約・感想【ちきりん】

自分のアタマで考えようについて

タイトル 自分のアタマで考えよう
概要 月間200万PVを誇る人気ブログ「Chikirinの日記」の筆者による初の完全書き下ろし。
ユニークな記事を生み出す独自の思考法を公開します!
著者 ちきりん
 

関西出身。バブル最盛期に証券会社で働く。その後、米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。マネージャー職を務めたのちに早期リタイヤし、現在は「働かない生活」を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦などを含め、これまでに約50カ国を旅している。
2005年春から“おちゃらけ社会派"と称してブログ「Chikirinの日記」を開始。政治・経済からマネー・問題解決・世代論まで、幅広いテーマを独自の切り口で語り人気を博す。現在、月間100万以上のページビュー、日に2万以上のユニークユーザーを持つ、日本でもっとも多くの支持を得る個人ブロガーの1人。
著書に『ゆるく考えよう』(イースト・プレス)がある。

amazon評価(記事執筆時点) ★★★★☆ (4.3/5)

自分のアタマで考えようの目次+要点

序 「知っている」と「考える」はまったく別モノ―プロ野球の未来について考えてみよう

自分の頭で考えているようで、実は考えていない。そんなことがあちらこちらで見受けられます。では、自分の頭で考えるってどういうこと?そして、なぜ自分の頭で考えられないの?ということに触れているのが第一章です。

その答えは”知識が邪魔をする”ということにあります。知っているから、考えられないのです。

本の中では、野球のファン層のデータを見てどう思いますか?ということを例に挙げています。おそらくほとんどの人が、高年齢化が進んでいる野球ファン層のデータから「これは将来は暗いな…」と思うはずですし、中には「もう斜陽だな」と思うかもしれません。

でも実際はどうなのか?となると、お金と時間が豊富にある層が応援をしてくれているので、業界全体としては非常に儲かる状態にあるとも言えますので、決して今を悲観的にとらえるべきではないというデータとも言えます。

では、なぜ高年齢化が進むとダメだと思ったのかと言う部分で”知識”がその結論を導いた、つまりデータを見て考えているようで、考えていないということが言えませんか?ということが書かれています。

このような事はあちらこちらで見受けられ、客観的に俯瞰で全体的に見ているようで、その実は、自分の記憶の中にある答えを引っ張り出してきているだけということはよくある話です。

なので、自分の頭で考えるというのは、”一旦自分の頭の中にある知識を横に置く”ということがとても大切なんですよってことが書かれています。

1 最初に考えるべき「決めるプロセス」―会議を重ねてもなにも決まらないのはなぜ?

考えることができない理由として、情報を集めて分析することが目的になっているということが考えられます。なぜそのようなことが起きるのかというと、”決めるプロセス”が具体的に決まっていないために起きるというのがこの章で伝えたいことです。

ただなんとなく、ぼんやりと”○○について”決めましょうとだけ銘打って会議をする。ぼんやりとした会議テーマなので、1回目だけでは結論が出ず、2回目、3回目と回数を重ねても答えはでない。でも、比例して情報とデータだけは増えていき、それが余計に決断できない状況を作っている。なんてこともあります。

なぜこのようなことになるのかというと、どういう決断をどういう手順とルールのもとでいつまでに決めるのかということが明確になっていないため。

ぼんやりと”晩御飯何を食べようかな”ぐらいのノリでスーパーに入り、なんとなく食材を見てはいるけど、何を作ろうかは決めきれていない状態。そうじゃなくて、今日何を食べるのかの方針を決めてしまって、スーパーでその方針にそってどんな食材があるかを見て、よし、今日はこれ!と決める。

そういう考え方のルール、決定のルールが不明確なので、情報が増え、考えているようで考えてない状態が生まれてしまいます。

2 「なぜ?」「だからなんなの?」と問うこと―合計特殊出生率が上がっても少子化は止まらないです

情報に触れた時に「なぜ?」「だからなんなの?」と問う。それが自分自身の”考える”にスイッチを入れることになるし、考える力を鍛えることにもなりますよってことがこの章で書かれていることです。

情報やデータを見た時に「なぜ?」と感じたことを列挙してみる。そしてそれを考える。

出生数が減っているが、それはなぜか?。

なぜ出生率が減っているのか、なぜ出生率が減ると問題なのか、なぜ出生率を上げることができないのか…そういったことを自分なりに考えてみる。考える過程で必要な情報やデータは今の時代ならインターネットで手に入りますので、それを活用して考えてみる。

加えて、「だからなんなのか?」の視点で疑問をあげていく。人口が減少すると何が問題なのか。出生率を上げることも問題なのか?などなど。だからなんなのか?と問題として定義していることそのものに疑問符をぶつけてみる感覚で問いを建てていく。

そして、それを考える。ただ、「だからなんなのか?」という問いは未来視点での問いかけなので、参考となるダイレクトな情報やデータがありません。少子化問題がこれからどうなるのかを的確に言い当てている情報やデータはなく、あくまで”このままだと、おそらくこうなる”という仮説のもとでの情報やデータとなっています。

だから、「だからなんなのか?」は自分の頭で考えて、おそらくこうなるであろう…という仮説を自分なりに練り上げることになります。なんでも知るや調べるで埋め合わせるのではなくて、自分の頭で”考える”ことで、あらゆる局面で”考える”力が役立ちますので、積極的に「なぜ」「だからなんなのか?」と問いかけて考えましょう。

そのようなことが書かれています。

3 あらゆる可能性を検討しよう―日本にも格安生活圏が必要では?

網羅的に、もれなくくまなく考える。思い込みで選択肢を排除したりしないことも、自分の頭でしっかりと考える上では大切で、それには2つのスキルを使うと良いよってことが書かれているのがこの章です。

もれなくくまなく、しかし効率よく考えるには、まず「ツリー構造」で二分木的に考えることがコツの1つです。

この状況において、AorBという二択の構造を明らかにする。”やる””やらない”や”する””しない”など。そして、その各々の選択肢をさらに細分化していく。

例えば、利益を増やすためには、売り上げを伸ばすか、経費を減らすかという二択になります。経費を減らすという選択肢を選んだのなら、経費をどのようにして減らすのか。例えば、固定費を減らす、変動費を減らす。このように全体を包括的に見れる選択肢を明らかにしていき、それぞれの可能性や展望・展開を見ていくというのが1つの方法。

もう1つが、構成要素を明らかにし、その組み合わせで何がどう変化するのかを見ていくというもの。

  要素A 要素B 要素C
呼称1
呼称2  
呼称3  
呼称4  
呼称5    
呼称6    
呼称7    
呼称8 - - -

などのように、どれがその特徴を決定づけているのかを明らかにするという整理の仕方です。

呼称を明らかにすることで、どの要素が必要なのか、どの要素が不要なのか、どの要素を高めればいいのか、なくせば良いのかなどを考える土台にしていくというものです。

4 縦と横に比べてみよう―戦後経済の縦横比較から見える日本が進むべき道

あらゆることの分析は比較によってなされます。そして、その比較の基本は縦と横の軸で見ることが重要ですということが書かれているのがこの章です。

イメージで言えば、この表な表形式での比較が重要だということです。

  列1 列2 列3
行1      
行2      
行3      

そして、この2つの軸の基本となるのが以下の2つです。

  1. 自他の比較
    • 自分と他者
    • 自分と他者(ベストプラクティス分析)
    • 自国と他国
    • …等々
  2. 時系列の比較
    • 過去と現在(歴史)
    • 過去と現在と未来(予測)
    • 現在と未来のあるべき姿(目標)
    • …等々

例えば、縦列に自分と他人Aの比較軸、横列が過去と現在という時間軸を設定し、料理の手順をテーマにすると、どこでどのような違いがあるのかが見えてきます。

もし、自分より他人Aさんのほうが料理が上手いなら、時系列で手順を細分化して比較することで、何がどう違うのかが見えてきて、それが改良点、改善点となる可能性が非常に高いということです。

この考え方はあらゆる場面で応用可能ですので、2つの軸(自他・時系列)での比較表を作って比較するという知識を持っておくことが大切だよってことが事例を交えて書かれています。

5 判断基準はシンプルが一番―婚活女子を見習おう!

決める手順を決めることが大切であるということを第一章で書かれていましたが、さらに一歩踏み込んで、決めるための基準を明確にシンプルにしようということが書かれているのがこの章。

いっそのこと1つの基準に絞り込んでみ?ということで書かれています。そうやって判断基準を1つに絞り込む過程に大切なのは何か?を考えるという行為が生まれるし、その思考もとても大切なプロセスでもあります。

その例として、婚活での相手選びが挙げられています。

「相性」と「経済力」。世の婚活女性の多くはこの2つを重視していますし、どちらも○となる相手は迷いなくお付き合いから結婚までを見通せる相手として選ぶはずです。

では、婚活と経済力、どちらかしかない相手なら?となると決めきれない。だから迷うという事になるはずですが、そこで一歩踏み込んで、どちらが大切なのか?を考えてみましょうってことなのです。

本の中では、後々修正可能だからということで”今の経済力”に期待しなくてもいいよね?とされています。相性は後々修正できる見込みは低いが、経済力は今後伸ばす余地がある。それなら、相性を重視すればいいいいのでは?と。

もちろん、それが正解だよってことではありません。中には相性よりも経済力が大切だ!という人も居るとは思いますが、つまりは明確に優先順位を決めることも”考える”ということになりますよってことが書かれているのがこの章です。

6 レベルをそろえて考えよう―生活者目線で霞ヶ関の組織図を書いてみた

話している内容がかみ合っているようで、微妙にかみ合っていない。これは、その会話の”レベル(階層)”が違うから起きる現象。このレベルを揃えるという事を意識することで、わかりやすくなることが多々ありますよねってことが書かれているのがこの章です。

おそらく、これは”論点”と置き換えてもいいのですが、”論点”だと点を表す言葉ですので、どうしても伝えたい内容とズレが生じます。だから、レベルという表現を使っているのだと思います。(これもある意味ではレベルを揃えるという事になるかもしれません)

本の中には”アフリカ”を表現するときだけ大陸名でひとくくりにしがちですが、おかしくないですか?という問題提起がされています。これもレベルが合ってないという1つの例です。

ビジネス系の記事で、中国の市場が、アメリカの市場が…という国単位の切り口で書いておきながら、アフリカの市場は…と急に大陸をひとくくりにするものがあるが、レベルがあってませんよね?それなら中国の市場と言わずにアジアの市場と書かなきゃ!といった感じです。

このレベルを合わせる意識が乏しいと、議論をしていても微妙にかみ合わないなんてことが起きるそうです。「派遣社員は長年働いても有給休暇すらもらえないことがある」という意見に対して「好き好んで派遣社員をしているのだろう!」という反論は、反論になっていません。

反論をするなら、有給休暇制度について反論するのがレベルの合った反論、論点の合った反論です。実際に好き好んで派遣社員をしている人も居れば、やむを得ずその仕事をするしかなかった人も居ますから反論として成立していません。

そういうことを自分で理解できるようになると、レベル(階層)を合わせて考えるということができるようになってきますよってことが書かれているのが、この章です。

7 情報ではなく「フィルター」が大事―就活のための企業研究が無意味なワケ

情報をうのみにせずに、自分自身のフィルターを持とうということがこの章では書かれています。フィルターとは何か?というと、価値観・価値基準と言い換えると良いかもしれません。

さらに言えば、他人のフィルターで選別された情報に振り回されないことが大切だよってことでもあります。

この章の中では、その具体例として就活時の情報収集について書かれています。現代は就活に関する情報は非常に多く揃っており、企業を調べるにしても、企業に関する情報も多く揃っているため、逆に混乱するかもしれません。

そこで”XXにおすすめ企業”みたいなフィルタリングがかかった情報を参考にする人が多いかもしれませんが、そこで他人にフィルタリングを使うのではなく、自分の中にフィルターを作って選別しましょうってことが書かれています。

例えば、これからも伸びる企業で成長を実感しながら働きたいってことなら、社歴が浅いほうが良いし、成長している業界カテゴリーが良いとなるはずです。反面、それは安定性というフィルタリングを捨てることにもなる可能性が高いです。安定性を捨てるということは大企業という選択肢はなくなってきます。

こういう自身の中のフィルタリング機能を持つことが大切ですよってことが書かれているのがこの章です。

つまりは、個人の価値観を明確にしましょうねってことが書かれていますので、情報の扱い方が書かれていた前章までとは違い、情報を扱う自分自身を整えることの大切さと手法が書かれている章になっています。

8 データはトコトン追い詰めよう―自殺の動機トップが「健康問題」ってホント?

考えるときは正解のある問いではなく、正解が決まってない問いであることがほとんど。正解が決まってないからこそ考えてみようとなるわけだけど、その際に考えるための材料とするのが「データ」。

その「データ」に対する向き合い方が書かれているのがこの章です。

一言で言えば、考える前にサマリー(要約)は見ずに、可能な限り詳細なデータまで当たっていくことが大切だと書かれています。

この章では例として「自殺」に関するデータを取り上げて、どう思うのか、何がわかるのか?ということを考えてみようというケーススタディが挙げられています。

年による違い、男女差、理由…等々いろいろなデータを当たりながら考えをまとめましょうってことなのですが、要約を先にみないこと。白書などを当たれば自殺に関する要約が必ず書かれています。それを先に見てしまうと、バイアスがかかった状態でデータを見ることになりますので、どうしてもデータを偏見を持って解釈してしまいます。

それでは自分の頭で考えたという事にはなりませんので、サマリーなどで事前に情報を入れすぎないことも、考える上では大切だということが書かれています。

9 グラフの使い方が「思考の生産性」を左右する―階段グラフで電気料金の大幅削減に成功!

この章では、考える際には「グラフ」を巧みに使いましょうねってことが書かれています。個人的な印象では、この章がこの本のここまでの総まとめ的な内容となっている印象です。

グラフと言えば、円グラフや棒グラフが代表的です。もちろんそれらを巧みに使っていくことが重要ではあるのですが、加えて、「階段グラフ(滝グラフ)」も便利だから積極的に使っていきましょう!ってことも書かれています。

より視覚的に理解しやすくなりますので、グラフ1つから読み取れる情報量やメッセージが圧倒的に増えます。

加えて、フローチャートも使うとより効果的に全体を把握することができますよ!と、グラフをいかに使うのかというスキルのオンパレードです。

中でもフローチャート+滝グラフを使って考えるという部分では、4章の縦横で比較して考えるという考え方も応用されています。

例えば、縦軸では経費の滝グラフ、横軸はフローチャートとすることで、どの部分にどれだけの経費がどういう風にかかっているのかが直感的にわかるようになりますので、経費の全体像を非常につかみやすくなります。

これは文章で説明するよりも、実際にグラフを見ながら説明を読むほうが理解が深まると思いますので、ぜひ本を読んで理解してもらいたい部分ではありますが、このグラフの使い方をマスターするだけで書籍代以上の価値を得ることはできると思います。

終 知識は「思考の棚」に整理しよう―世界の大事件、NHK、BBC、CNNはこんなに違ってた

終章では、”知識”と”思考”の関係性について言及されています。

知識を得ることに重きを置くのが日本では多く見られますが、実際には思考も重要で、なんなら思考の重要性は上がっているように思います。しかし、「自分で考えてみよう」となると、なかなか自分で考えることができない、考える方法がわからないということでのこの本ではありますが、とりわけ知識と距離を置くことの重要性があげられています。

1つは繰り返しここまで書いているとおり、”先入観になるため”です。知識があると情報を得ても、データに触れてもそれが先入観となり、知識どおりの結論に自分を持っていこうとしてします。それは考えているとは言わないよってこと。

1つは、思考することで知識の置き場所が脳内に作られるので、思考をして棚を作るほうが、知識も良い感じで収まるよってことが書かれています。知識は知識単体で役立つものばかりではなく、事実と関連付け、何らかの仮説や結論を導き出せて価値を生むものもあります。

後者の場合は、思考で棚を作ることによってこそ実現されますので、思考をしましょうということが書かれています。

例えば、テレビのニュース番組を見ていて、同じニュースなのに局によって扱いが違うのはなぜだろう?と疑問を抱き、そこから何が違うのか…ということを調べて考える。

そうすると、テレビ放送に関する思考の棚が脳内に作られ、そこに放送に関するあらゆる知識とデータが収まっていくことになります。思考をひとしきり終えたころには、知識とデータが可能な限り思考の棚に埋まっているので、それが必要となった時には取り出しやすくなっていますし、似た事例を見た時にはその棚から知識を持ってくることもできます。

だから、情報やデータを得て、何か思う事、感じることがあったら、そこで思考をしてみましょう!それがあなたの知識を増やすことにもなりますよってことが書かれている章です。

自分のアタマで考えようの感想

この本をはじめて読んだのは5年前ぐらいかもしれません。5年後の今読んでみて思うのは「全然読んだ内容を覚えてないし、理解してなかった…」ということ。自分でも引くほどです。

全くと言って良いほど覚えてないので、むしろ新鮮に読むことができました。

考える…今思えば自分のやっていたことは悩んでいるだったように思います。あれでもないこれでもないとグルグルと思考を巡らせているだけでした。結局は何も整理されていないし、明らかになっていない。

そう、つまりは、考えるということは、整理して明らかにしていくことなんだということをこの本から教えてもらったように思っています。

それを自分なりに体得するために本を読んですぐにノートとペンを持って、気になることを考えてみようとしました。なかなかうまくできませんが、それでもやってみると以前よりスッキリと考えれるようになった自分も居ます。整理され明らかになると、じゃあどうすればいいのか?というところにまで思考が及ぶんです。

逆に言えば、整理されずに明らかになってないから、そこから抜け出せなかったんだな…とも思います。

一朝一夕に思考力が上がるとは思わないので日々これ鍛錬のつもりでこれからも考える練習は重ねますが、読んでよかったと思える一冊であることは間違いありません。

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